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2021.08.30

人的資本資源の会計

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1. はじめに
2020年8月、米国証券取引委員会(SEC)が上場企業に対して、人的資本資源に関する情報開示を義務付けたことを契機に、人的資本資源の情報開示が世界的に重要性を増す可能性が高くなっています。
これは米国の主要IT企業GAFA(グーグル、アマゾン、フェイスブック、アップル)に代表されるように、今日の経済はナレッジ型経済ともいわれ、労働力としての従業員そのものより、人のもつ知的財産、重要な知識・ノウハウなどの無形な能力に着目したあり方が問われているからです。
また、我が国における「知恵を借りる(知恵を譲り受けるとは表現しない)」との慣行から、重要な知識・ノウハウは等価交換を前提としており、企業内における「個人のれん」の在り方が問われています。


2. 人的資本資源とは
人的資本資源とは、個人の知識、経験、ノウハウなどの集合的な人的資本といわれています。会計上、これを外部報告に焦点をあてる貸借対照表にいかにして計上されるかに焦点があてられます。
財務会計の概念フレームワークでは、資産の定義を「資産とは、過去の取引または事象の結果として、報告主体が支配している経済的資源をいう。」と定めています。
また、現行の会計基準においては、人的資本資源はのれんの一部として取り扱われており、個別に識別可能な無形資産として認識・測定することは禁止されています。
よって、現状、人的資本資源の会計においては、貨幣額での認識・評価に焦点を置かず、オフバランス化した非財務諸表の情報として取り扱われています。


3. 人的資本資源を公正価値によって評価する方法
人的資本資源を会計上認識できた場合、またはのれんの一部として評価するときは、当該評価はIFRS第13号「公正価値測定」に準じて評価されると考えられます。
IFRS第13号では、公正価値を「測定日における市場参加者間の秩序ある取引において、資産の売却により受領する、または負債の移転により支払う価格」と定義されています。
この公正価値の評価方法として以下の3つアプローチがあります。
コスト・アプローチ
マーケット・アプローチ
インカム・アプローチ


4. おわりに
今回は、「人的資本資源の会計」について概要をご説明しました。
なお、今回の解説も、概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。
ご不明な点等ございましたら、お気軽に弊社までご相談下さい。


(参考資料)
米国証券取引委員会HP :
        (令和3年8月21日アクセス)
Financial Accounting Standards Board (FASB)
(令和3年8月23日アクセス)
企業会計基準委員会:財務会計の概念フレームワーク(2006年12月28日)
IFRS第13号_Fair Value Measurement



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