1. はじめに
2019年1月1日以後に開始する事業年度より、国際財務報告基準(IFRS)では新リース会計基準(IFRS第16号)が強制適用されています。わが国においてIFRSを適用している企業は決して多くありませんが、国際会計基準の収斂に向けて、日本においても企業会計基準委員会(ASBJ)で2019年3月にすべての資産および負債を認識するリースに関する会計基準の開発に着手することが決定されました。今回は、借手のリースについて、IFRSの新リース会計基準の概要をご紹介します。
2. IFRS第16号の新リース会計基準
IFRS第16号の目的は、(a) リース取引を忠実に表し、(b)財務諸表の利用者がリースから生じるキャッシュ・フローの金額、タイミングおよび不確実性を評価するための基礎を提供することです。その目的を達成するためには、借手はリースから生じる資産と負債を認識する必要があります。
① リースの定義について
経済的実質に基づきリースを識別するためのより詳細なガイダンスが存在します。
② 原則的会計処理
原則として、12ヶ月を超える期間のすべてのリース取引に係る資産と負債を認識する必要があります(「単一モデル」)。
借手は、原資産であるリース資産を使用する権利を表す使用権資産と、リース料を支払う義務を表すリース負債を認識する必要があります。
その際、「使用権資産」および「リース負債」という科目を使用します。
③ 原則的会計処理の例外
短期リース(リース期間が12カ月以内のもの)又は少額リース(目安として5,000ドル以下)については、賃貸借取引に準じた会計処理が認められます。
3. 新リース会計基準適用による影響
新リース会計基準適用による最も大きな影響は、上記の通り、貸借対照表上にオンバランス処理されるリースの範囲が広がったことです。総資産および総負債が増加するため、様々な財務指標に大きな影響を及ぼす可能性があります。これまでリースを多く利用してきた企業ほど受ける影響が大きくなるため、注意が必要です。
4. おわりに
今回は、日本においても近い将来導入が予測されるIFRSの新リース会計基準の取扱いを確認しました。現時点では導入の検討段階ですが、いざというときに備え、新リース会計基準で新たにリースとして認識すべき取引がないか確認を進めてみてはいかがでしょうか。
参考資料
・ 橋本尚・山田善隆『IFRS会計学基本テキスト(第6版)』中央経済社
電話で問い合わせる03-6821-9455