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2017.07.31

国際課税をめぐる近年の改正

BEPSプロジェクト行動13:移転価格税制に係る文書化制度

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1. はじめに
BEPSとは何か。
これは、税源侵略と利益移転(Base Erosion & Profit Shifting)の略称で、多国籍企業グループによる果敢な租税負担軽減策のことであり、BEPSの典型例としてDouble Irish & Dutch Sandwichが揚げられます。
このような状況の中で、平成24年にOECDでスタートしたものがBEPSプロジェクトです。
これは「公平な競争条件(Level Playing Field))」という考え方の下、多国籍企業が課税所得を人為的に操作し、課税逃れを行うことがないよう、国際課税ルール全体を見直すプロジェクトです。
今回は、BEPSプロジェクト行動13である「移転価格の文書化の再検討」について、概要のご紹介をいたします。


2. 多国籍グループが作成する移転価格文書
「多国籍企業情報の文書化」に関する勧告を踏まえ、平成28年度の税制改正で整備された制度です。
このBEPSプロジェクト行動13で勧告されているのは、①国別報告事項、②事業概況報告事項、及び③独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類、の三層構造です。


① 国別報告事項(Country-by-Country Report : CBCレポート)
前期の連結総収入が1,000億円以上の多国籍企業グループの最終親会社が、事業を行っている「国または地域毎に」収入金額、税引前利益、納税額、資本金額、従業員数等の財務基礎情報を提出しなければなりません。


② 事業概況報告事項(マスターファイル)
事業概況報告事項の提出義務を負う特定多国籍グループに該当するのは、国別報告事項の要件と同様である、多国籍企業グループのうち、直前最終会計年度の総収入金額が
1,000億円以上である多国籍企業グループです。
当該開示事項に関しては、次の5つの区分に関して文書としてまとめる必要があると考えられております。


   ● 企業グループの構成に関する事項

   ● 企業グループの事業等の概況に関する事項

   ● 企業グループの無形資産に関する事項

   ● 企業グループの金融活動に関する事項

   ● 企業グループの財務状況等に関する事項


③ 独立企業間価格を算定するために必要と認められる書類(ローカルファイル)
関連者間取引において独立企業間価格を算定するための詳細な情報を記した文章であり、記載が必要とされるのは、次のような事項です。


     イ. 組織図
     ロ. 経営戦略
     ハ. 主要な競合他社
     ニ. 主要な関連者間取引と取引背景
     ホ. 移転価格算定根拠
     ヘ. 財務諸表等


さらに、わが国の制度では、最終親会社等届出事項も追加されております。


3. 最終親会社等届出事項
特定多国籍企業グループ(総収入が1,000億円以上の多国籍企業グループ)の構成会社等である内国法人又は恒久的施設を有する外国法人が、最終親会社の名称、本店所在地、法人番号、代表者の氏名に関する情報を会計年度の終了の日までに、e-Taxにより所轄税務署長に提出する制度です。平成28年4月1日以後に開始する会計年度より適用開始となっております。



4. おわりに
今回のニュースでは「BEPSプロジェクト行動13:移転価格税制に係る文書化制度」の概要を取り上げました。


なお、今回の解説も概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。


ご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までご相談ください。


(参考資料)
 移転価格税制に係る文書化制度に関する改正のあらまし
https://www.nta.go.jp/shiraberu/ippanjoho/pamph/pdf/h28iten-kakaku.pdf
平成29年7月14日アクセス

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