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2017.05.31

仮想通貨② - 仮想通貨と会計基準

(IFRS及び主要国による会計基準への取り組みの状況)

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1.はじめに
2017年4月のニュースでは仮想通貨に関する法整備の状況や、その中核をなすブロックチェーンの仕組みを取り上げました。一方、仮想通貨に関連した様々な取引については、会計上はどのような処理が必要になるのでしょうか。
今回は、IFRSや我が国、あるいはアメリカの会計基準が、仮想通貨に対してどのような対応を取っているのか、その現状について纏めてみました。


2.総論
結論から申し上げますと、2017年5月時点において、基準は事実上確立されていないというのが現状です。仮想通貨の法整備が整い始めたのが比較的最近ということもあり、まだ取引の本質を検討している段階と言えます。以下、IFRS、日本、米国での直近の動向を取り上げたいと思います。


3.各国の取り組み
<IFRS>
日本とアメリカを除く殆どの国が採用しているIFRSですが、IASB(国際会計基準審議会)において仮想通貨は、2015年の議論の中で、今後の論点になりうるものの一つとして取り上げられた程度でした。


その後、IFRSの諮問機関であるASAF(会計基準アドバイザリーフォーラム)により2016年12月に開かれた会議の中で、仮想通貨の会計処理が議論されました。


・その際、AASB(オーストラリア会計基準審議会)が、この議論のアジェンダを作成し、その中で仮想通貨に関して様々な分析が行われ、以下のように分析しています。
① 現金及び現金同等物あるいは金融商品には該当しない。
② 棚卸資産あるいは無形資産に該当する。
この点は、仮想通貨を通貨同等の財産価値を持った正式な決済手段として認めている日本のいわゆる仮想通貨法や消費税法の解釈とは異なっています。


・資産区分ごとの分析は以下の通りです。


・この会議の中で様々な意見交換がなされましたが、結局は「IASBが引き続きこの論点の進展を注視していく」ということで、会議は終了しました。これ以降は、現時点までIASBによる議論は行われていません。


<日本>
仮想通貨の取り扱いは、2016年11月にASBJ(企業会計基準委員会、日本の会計基準設定主体)が開催する基準諮問会議で初めて取り上げられました。


その後に何度かの会議を経て、最近では2017年4月28日のASBJの会議で、今までに聞かれた意見が審議され、基準設定において取扱う範囲が検討されました。そこで、仮想通貨の利用者及び交換業者における会計基準の開発は、最小限の項目に留めるべきとの事務局案が提示されましたが、その主な理由は以下の通りです。


・現時点では仮想通貨関連ビジネスは初期段階にあること。
・国際的にも仮想通貨の検討は行われておらず、参照すべき会計基準がないこと。
・日本基準において、直接的に該当する会計基準が無いこと。


優先的に検討すべき最小限の項目として、以下が挙げられています。


<アメリカ>
アメリカでは、まだ仮想通貨の会計上の取り扱いに関する議論は行われていません。しかしながら、この2~3年で下記のような動きがありました。


2014年にIRS(米国の内国歳入庁。日本の国税庁に相当)が、仮想通貨の取引に関する税務上のガイドラインを発表しました。主要な内容は下記の通りです。


・仮想通貨は、現金通貨ではなく、資産として取り扱う。
・合理的な方法(reasonable manner)により時価評価する。
・仮想通貨を入手(mine)した場合、その時価を収益計上する。


それに対し、米国公認会計協会(AICPA)が2016年6月にレターを公表し、その中で以下の問題点を上げております。


・仮想通貨を時価評価する場合の合理的な方法とは、どのようなものか
・仮想通貨は複数の取引所により異なる相場が表示されており、どの取引所の相場を用いればいいのか。
・仮想通貨を取得に要した費用は、棚卸資産や固定資産取得の付随費用と同様に資産計上されるのか、それとも費用計上されるか。
・仮想通貨を「法定通貨に転換可能な資産convertible virtual currencies」と捉える場合、通貨とは異なるため、物品やサービスを購入した時点で、交換取引として損益が生じることになる。原価も時価も複数存在する仮想通貨のうち、どの仮想通貨が取引に用いられたのかを把握するのはほぼ不可能なのではないか。


これ以降は現在まで議論は進んでいませんが、AICPAも当該レターを通じて、仮想通貨の会計処理を検討していると言えるのではないでしょうか。


4.終わりに
今回のニュースでは「仮想通貨について、IFRS、日本及びアメリカにおいて会計上どのように取り扱われているのか」について取り上げました。いずれも検討中の段階であり、今後の進展があった場合にはこのニュースで取り上げたいと思います。


 なお、今回の解説も概略的な内容を紹介する目的で作成されたものですので、専門家としてのアドバイスは含まれておりません。個別に専門家からのアドバイスを受けることなく、本情報を基に判断し行動されることのないようお願い申し上げます。


ご不明な点がございましたら、お気軽に弊社までご相談ください。


(参考文献)
AASB(オーストラリア会計基準審議会)のホームページ
http://www.aasb.gov.au/admin/file/content102/c3/AASB_ASAF_DigitalCurrency.pdf

ASBJ ホームページ 
https://www.asb.or.jp/jp/project/proceedings/y2017/2017-0428.html

AICPAホームページ
https://www.aicpa.org/Advocacy/CPAAdvocate/2016/Pages/Virtual-Currency-Guidance-Needed.aspx

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